白昼夢の森の少女
向かいのビルによく鳩が2羽止まっています。
つがいなのか、友達なのか・・いつも一緒です。
今日も仲良く窓の外を飛んでいてとても癒されます。
どうも、やぎやまです。
今日は久々に本の紹介?感想?を書きたいと思います。
先日 本屋へ行った際、大好きな恒川幸太郎さんの新作を発見したので購入してきました。
見つけてから手に取るまでの速さたるや光をも凌ぐ勢いでした。嘘です。
嘘ですが気持ちはそのくらいでした。
購入したのはこちら☟
短編集「白昼夢の森の少女」です。
それぞれ簡単に感想を書いていきたいと思います!
- 『古入道きたりて』
- 『焼野原コンティニュー』
- 表題作『白昼夢の森の少女』
- 『銀の船』
- 『海辺の別荘で』
- 『オレンジボール』
- 『傀儡の路地』
- 『平成最後の落とし穴』
- 『布団窟』
- 『夕闇地蔵』
- ◖まとめ◗
『古入道きたりて』
山奥へ釣りに出かけた男が雨に降られてしまう。
山小屋のようなものを見つけ、雨宿りへ行くとそこには老婆が一人で住んでいた。
老婆の好意で一晩泊めてもらうことになった男は、その夜不思議なものを見る。
1話目から最高でした。
やぎやまが待ち望んでいた恒川ワールド!これだよ!という感じ。
現代ではなく、昔っぽい雰囲気の、日常と非日常の境目に不意に迷い込んでしまった、というような雰囲気がとても好きです。
これは続きが読みたい!
お萩に季節ごとの呼び方があるとは知らなかった。
『焼野原コンティニュー』
“マダさん”は焼野原で目を覚ます。
自分が“マダさん”であること以外は何も覚えていない。
一体なぜこんなことになったのか・・
“マダさん”は焼野原をフラフラと歩き出す。
なるほど、ポップ(?)なタイトルとは裏腹になかなかヘビーな感じ。
なぜ焼野原なのか、なぜ記憶がないのか、なぜコンティニューするのか。
理由が明かされないまま進んでいく物語は、まるで自分が“マダさん”になったかのように感じました。
あとゲームっぽい。これも面白かったです。
こんなやつかなぁ・・
表題作『白昼夢の森の少女』
ある日突然、植物が人間を絡めとってしまった。
何十人も、何百人も、次々と・・。
絡めとられた人々、植物に覆いつくされた街の行く末はー。
うーん、何だか色々と考えさせられる・・。
絡めとられた人々は意識を共有することが出来る。
それはつまり良い考えも悪い考えも他の誰かに知られてしまう。
意識の共有から出来た“夢”は魅力的だけど、頭の中も全部共有っていうのはなかなか恐ろしいような。
「滅びの園」と雰囲気が似てる話だなぁと思いました。
恒川さんの想像力に限界なんてものはないんだなぁ・・。
「水槽の脳」を彷彿とさせるなぁ
『銀の船』
ナナコには小さい頃からいつも見る夢があった。
それは空飛ぶ巨大な銀色の船の夢だ。
小さな島くらいあるその船は世界中を巡っている。
そして時折どこかで停泊する。
短大生になり、船のことも忘れたナナコの前に突然夢の船が現れた。
ん?これどっかで読んだことあるぞ?と思い、
まさか同じ設定の別主人公の話!?アツイ!!!
とか勝手に思ってワクワクしてたんですけど、同じ話でした(笑)
角川創刊20周年記念アンソロジー「二十の悪夢」の中に収録されている話でした。
でもうちの本棚になかったので多分恒川さん目当てで本屋で立ち読みしたやつw
これ非常に面白いです。2回目ですけど面白かったです。
というか多分何回読んでも面白いと思う。
乗れば二度と元の生活には戻れない、その代わり老いることはない。
色んな世界を旅することが出来る。働く必要もない。
・・・自分なら乗るだろうか?と何度も考えてみましたが、私はきっと乗りません。
ということは私は今、とても幸せなんだなぁと改めて思いました。
捨てられない何かがある人生というのはとても幸せなことです。
このお話を読む時は是非真剣に想像してみてほしいです。
捨てられない大切なものを自分がどれだけ持っているか。
でもちゃんと戻れるなら1ヶ月くらい乗りたい・・(笑)
『海辺の別荘で』
浜辺で倒れている女を助けた男。
家に連れて帰り食事を振舞った。
女は 自分は椰子の実から生まれたのだと言った。
とても短いお話でテンポよく進むのであっという間に読み終わります。
一見おとぎ話のような始まりですが、なるほどそうくるか・・という内容。
こんな短いお話も面白く書けるのはすごいですね。
短編も長編も書ける作家さんは一流!って感じがします。
親指姫って何から生まれたんだっけ?
『オレンジボール』
保健室のベッドで目を覚ました「ぼく」は
自分が毬になっていることに気付いた。
かなりポップで明るいが、カフカの「変身」のようだ(笑)
毒虫と毬の違いがあり、主人公がわりと楽観的ですので印象は180°違います。
これもかなり短いお話ですのでサクサクっと読めます。
毒虫になってるよりはマシか・・・?笑
『傀儡の路地』
ある日、殺人現場に遭遇してしまった主人公。
逃げていく犯人を尾行し、メールで犯行を動機を尋ねる。
「ドールジェンヌに言われた。ドールジェンヌには逆らえない」
ドールジェンヌとは一体何者なのか・・。
いきなりホラーな感じの話が入ってきてビックリしました。
かなりオカルトな感じでメリーさんとコックリさんの融合という印象でした。
途中までは不気味だしドールジェンヌに腹が立つんですが、最後まで読むとドールジェンヌが可哀想にもなります。
こういう感じもいいですね。
でも本当のフランス人形ってあんまり可愛くないよね・・
『平成最後の落とし穴』
平成のスピリットと名乗る人物(?)から電話が掛かってくる。
平成の大事件は?平成のキャッチコピーは?
その人物は平成に関する様々な質問を次々と投げかけてくるのだった。
星新一っぽい!(笑)
話の流れとか、設定とか、オチに至るまで、ものすごく星新一っぽいSSでした。
こんな感じの話も書くんだなぁという感じ。
サクっと読めて面白かったです。
自分的な平成の大事件って何だろう?
『布団窟』
主人公の男の子はある日、同級生の家に遊びに行く。
その家には約20人分ほどの布団の積まれた部屋があった。
積まれた布団に潜って遊ぶ主人公だったが・・・。
個人的にはドールジェンヌの話よりもこっちの方が怖かった・・。
日常から地続きでの非日常は怖すぎるよ~!笑
心の準備もないまま足を踏み入れてしまうんだ。
結局何だったのか分からずじまいなのも余計怖い。
ただ、大量の布団を出して遊ぶのは絶対楽しい。
『夕闇地蔵』
お地蔵様の前に置き去りにされていた赤ん坊、「地蔵助」。
地蔵助は他の人とは違う。
目が不自由な代わりに、“命の炎”が見えるのだ。
和風ホラーファンタジー、恒川さんの魅力凝縮な作品です。
やっぱりこういうのが好き!
夜市・風の古道・雷の季節の終わりにあたりの感じが一番好きなので「和」を感じさせてくれるホラーファンタジーは最高にワクワクしますね。
雨蛇さまって何だろう・・・
◖まとめ◗
個人的には「古入道きたりて」と「銀の船」、「布団窟」、「夕闇地蔵」あたりが凄く好きでした。
あえて一番を決めるのであればやっぱり「古入道きたりて」かなぁ。
いや、「銀の船」か・・うーん、決めがたい。
恒川さんのお話では“謎が謎のまま”で終わっていくものも多くあると思うのですが、不思議と嫌ではないんですよね。
お話に出てくる不思議な存在だったり、不思議な現象の原因だったり、そういうものを必ずしも明かさないことがほとんど。
けれど、明かさないことによって読み手も物語に参加出来るような気がします。
読み手にだけカラクリを明かすようなことはせず、登場人物たちが知らないこと・分からないことならば、読み手にも分からない。
登場人物たちと同じように「アレは何だったんだろう?」「なぜこんなことになったのだろう?」と考え、想像する。それがワクワクを生むのではないかと思いました。
次は“和風怪奇譚”的な長編が出るといいなぁ。
ではまたお会いしましょう、やぎやまでした。